研究概要 |
本年度は、平成21年度から始まった4年間の本研究、V-ingに関する研究の総括を行った。まず前半で、欧州言語では、英語で言えば進行形と単純形の両方の意味を単純形で表すのに、英語でだけ、動名詞や進行形が発達したのは、ブリテン島ケルト諸語のVerbal Noun (VN)のcalqueとして英語のV-ingが主に話し言葉で使用され、中英語で形容詞として、それ以降動名詞・分詞としても文献上にも現れる様になったという、それ迄の研究で得た仮定に基づき、VNとV-ingの幾つかの明確な共通性を追求し、VNにはaspectualな制限がない為に、19世紀初頭の小説や方言の進行形にもないと考え得る事を福岡言語学会(5月)で発表した。 後半は、前年度の研究で浮上した、進行形の制限は18世紀後半の英文法書記述と密接に関わっている可能性、を本格的に追求し始めた。主としてWischer (2003), Tieken-Boon van Ostade (2011), Görlach (1998)から、本研究に関わると目される、18-19世紀の英文法家達の記述における、進行形や進行形の制限に関する100近くの資料を抽出し、国内の大学からの貸借・文献複写・国内では京都大学付属図書館にのみ所蔵されているECCO、及びインターネットで電子書籍の閲覧等を通して、詳細に調べた。そこで18-19世紀の英文法記述には、18世紀文法家の権威とされるLowth (1762)を初めとして進行形が単純形のvariantとして扱われ、I’m lovingが例文として登場する文法書とI’m lovingを禁じる文法書が混在する事から、進行形の記述は18世紀後半のPickbourn (1789)の英語の時制に関する研究書が深く関わっている可能性に辿りついた。それについては、2013年3月の福岡認知言語学会で発表した。
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