研究概要 |
コソボ共和国内3箇所のフィールドにて、エスノグラフィーの手法で調査を実施した。 1. ミトロビツア地域の民族宥和を目指すNGO, Community Building Mitrovica (CBM)を視察。代表Valdete Idriziと副代表のAvni Alidemajに調査項目のインタビューを行い、英語使用は多民族宥和プロジェクトを実施するための重要な鍵であることが判明した。 2. 外務省が支援する日本NGO連携無償資金協力プロジェクト「多民族共存のためのワークショップ」における参加者のコミュニケーションを観察し、英語使用状況を調査。このプロジェクトでの英語使用は妥協策として捉えられる。 3. 2010年に新しく開設されたInternational Business College Mitrovicaの言語教育政策を調査した。多民族宥和を目指し、OSCE(欧州安全保障協力機構)がオランダ、デンマーク等を中心とするNGO(SPARK)と協力して開設し、すべての民族に平等に教育の機会を提供する大学として設置されたが、政治的な背景を鑑み、北部ミトロビツア地域と南部ミトロビツア地域にそれぞれキャンパスを開講することになった。全部英語で行うカリキュラムは統一され、将来的には合同のキャンパスを目標としている。両方のキャンパスをすべての民族に解放しているが、現実的には、北部はセルビア系コソボ人と北部に住むその他少数民族、南部はアルバニア系コソボ人と南部に住む少数民族の学生が通っている。学生と教員への調査は、次年度に補完する予定である。 昨年度末に実施した国際機関に従事する英語話者のコミュニケーションの特性については、4名の国連職員インタビューデータを分析した結果、母語の影響を受けた発音や語彙の選択が障害になることはほとんどなく、英語のlogicが意思疎通の中で最も重要なファクターであることが判明した。
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