英語の結果句には直接目的語制約と呼ばれる条件が働いているといわれている(Levin and Rappaport Hovav 1995)。例えば、Mary baked the cake dirty.において、dirtyな状態になったものは直接目的語のthe cakeで、主語のMaryではない。この制約は確立したものとされ、自動詞が非対格動詞化非能格動詞化に判別の診断法にも用いられている:*Mary laughed hoarse/The pond froze solid。しかし、この制約には未解決の反例も多く指摘されてきた。例えば、She danced/swam free of her captors.では、これらの動詞は非能格でありながら、結果句は主語を指向しうる。本年度の研究においては、これらの反例を前に、直接目的語制約を根本的の再考察し、背後に働いている真の原理を捉えるべく研究を行った。成果としては、結果句は状態と場所の二つのカテゴリーに分けられ、それぞれ場所的Theme、状態的Themeを指向するという原理を得た。したがって、たとえ非能格動詞であってもこの条件に合えば主語指向の結果句は可能となる。本仮説の予測通り、John died stiff with rigor mortis.のようなデータが発見された。Dieは非能格動詞であるが、Johnは意味的には状態変化の主体であり、それを指向する結果句stiffが予測通り現れる。またJohn drove his car to New York.では、Johnは意味的には移動主体の側面をもっており、場所的な主語指向の結果句to New Yorkが可能となる。本仮説から予測される多数の例が実際にコーパスから発見され、その妥当性が証明された。主語指向の結果句は中国語などにも多くみられるが、意味を分析すると本仮説が合理的に説明できることが分かった。これはまた新たな成果と言える。
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