本研究では、John hammered the metal flat.におけるflatのような結果句にかかる従来の確立した文法制約を解体し、新たな語彙意味論的観点から代案制約を提示した。結果句にはこれまで直接目的語制約(Direct Object Restriction ; DOR)という統語条件が適用するとされてきた。しかしDORには主語が結果句のホストになるなど多くの反例がみられ、新たな説明原理が求められていた。本研究では、従来のTheme役割をTheme<COS>(=change of state)とTheme<COL>(=change of location)に下位区分して、この区分からDOR現象を再分析し、Thematic Licensing Constraint on Resultatives(TCLR)を提案した。TCLRはDORと異なり、結果句の分布を直接目的語に依拠させず、結果句とそのホストとの意味的整合性が問題となる。この点が本研究のユニークな点であり、ブレークスルーである。したがってTCLRによれば、結果句のホストは直接目的語に限定されないことになり、DORが捉えていた事実はもとより、抱えていた問題点も一挙に説明できることになる。事実、The couple waltzed to the window.のような例はTheme<COL>主語で結果句は意味的に整合するPathで許容される。また本理論から新たなデータも予測できた。The dog died stiff with rigor mortis.のような非能格構文でも、主語は結果句のホストになれる。the dogはTheme<COS>で、状態を表す結果句と整合する。さらにTLCRは概念上も自然な認可条件である。変化が「状態的」と「位置的」とに応じて結果句もそれに整合した「状態」と「Goal」になるとする陳述はごく自然な提案である。本研究は結果句の分布を説明する革新的な制約を提案した。
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