研究概要 |
初年度に当たる21年度は、主に、通常の言語とは異なる特徴を持った間投詞由来のDM(oh,ah,uh,um,hum,eh,huh,wow,ouch,oopsなど)を中心に、それらの生物学的反応に基づく音声上の特性からそれぞれの核的意味を再分析した。さらに、上記の間投詞がDMとして使用された場合どのような伝達機能を持つかを、映画や実際の会話データを使って詳細に分析・考察した。特に、話し手の情報の受け取り方や、受け取った情報に対する感情、対人関係的機能に注目し、その際、それぞれのDMがどのような談話の節目で用いられるかを中心に、特に談話機能的な視点を導入し、前後の文脈、あるいは話し手と聞き手の想定等を含むさらに幅広い文脈を踏まえ、その文脈の中でDMが果たす談話機能の抽出を試みると同時に、それらが談話の中で用いられる際、話し手のどのような意図に基づいて使用されるのか、つまり、発話解釈におけるどのような効果をねらってこれらのDMは使用されるのかを、認知語用論である関連性理論の枠組みで考察した。 本研究は、音韻論、統語論、意味論など伝統的な言語学の枠組みのみならず、人間の伝達と認知における推論の役割を重視し、言語伝達だけでなく意図明示的伝達全般を研究射程に収めた関連性理論を使用するという点で学術的な特色を持つ。DMを言語学の視点からのみならず、刺激に対する生物の声の反応としての様々な視点を入れた分析は誰も行っておらず、きわめて独創的かつ学際的である。個々のDMの考察には、映画などの会話を使ってさらに説得力のあるデータと説明を提示するという意味で、学術研究分野でも英語教育分野でも新しい方向性を拓く可能性を持つと考えられる。
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