研究概要 |
本研究は、外国語としての日本語の話しことば指導に資することを目的とし、日本語母語話者およびドイツ語・フランス語・中国語・韓国語を母語とする日本語学習者の韻律受容に関するデータを収集し、それらを音響音声学、社会言語学、日本語教育の観点から分析、考察するものである。 H21年度に実施した研究の概要は、主に以下の3点にまとめられる。 (1)中国人日本語学習者およびドイツ人日本語学習者に対して行なった発話末の韻律(ピッチとテンポ)に関する聴取実験の結果について、日本語母語話者(統制群)の結果と比較、考察した。その結果、同一の音声刺激に対して,母語(日本語,中国北方方言,ドイツ語)によって「高さ」と「長さ」の判定に異なる傾向がみられた。日本語の発話末の韻律的特徴の知覚には、母語ごとに異なる傾向が見られ、母語からの「知覚の転移」が示唆された。 (2)上記の分析結果のうち、ドイツ人日本語学習者と日本語母語話者の二言語間比較については学会発表により、中国人日本語学習者と日本語母語話者の二言語間比較については論文発表によりその成果を公表した。 (3)フランス語を母語とする日本語学習者72名に対して、日本語の発話末の韻律(ピッチとテンポ)に関する聴取実験を実施し、実験結果の分析をおこなった。また、あわせて、フランス人日本語学習者の学習環境に関するインタビューをおこない、若年層日本語学習者の普通体運用の状況との関連を見た。 なお、本研究は、中央大学・文学部・教授・林明子(連携協力者)、フランス国立科学研究センター・上級研究員・西沼行博(海外研究協力者)との共同研究である。
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