本研究は、外国語としての日本語の話しことば指導に資するため、実験的な手法を用いることにより、日本語母語話者と外国人日本語学習者の韻律受容に関するデータを収集し、それらを音響音声学、社会言語学、日本語教育の観点から分析、考察するものである。平成23年度に実施した研究の概要は、主に以下の4点にまとめられる。 (1)平成22年度までに分析をすすめた日本語発話末韻律聴取実験の結果に、フランス人日本語学習者のデータを加え、日本・ドイツ・中国・フランスの4言語グループ間比較を行なった。多変量解析を行った結果、発話末最終音節の持続時間の長・短の判定、上昇・下降の判定ともに、4言語間でも、それぞれの母語グループ間でも有意差が見られ、日本語非母語話者の韻律知覚に「母語の転移」が見られることを明らかにした。 (2)実験協力者の実験に対するコメントを分析した結果、日本語学習者に対し、発話末韻律のバリエーションのインプットを積極的に行い、誰が誰に対してどのような形態を用いるのか、それはなぜかといった観察・発見を促すことが有効であろうとの認識に至った。 (3)平成22年度に収集した日本語母語話者の予備調査データを分析し、発話末の韻律的特徴と発話意図との関連について検討した。 (4)EAJS(ヨーロッパ日本研究協会)およびAJE(ヨーロッパ日本語教師会)の国際シンポジウムにおいて成果発表を行ない、海外において日本語指導にあたる研究者からの検証を受けた。 [連携研究者] 中央大学・文学部・教授 林 明子 [海外研究協力者] 元フランス国立科学研究センター・音声言語研究所・上級研究員 西沼行博
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