本研究は、言語少数派生徒と日本人生徒が在籍する教室において、学習場面における両者の対話に注目し、両者の学び合いの可能性を探ることを目的とする。 22年度は21年度に続き、横浜市の公立中学校をフィールドとして、授業場面における談話データを国際教室の取り出し支援で20時間、在籍級の入り込み支援で13時間収集した。また、新たに着任した国際教室担当教員と在籍級担当教員、及び支援の対象生徒2名に対するインタビュー調査も併せて行った。 22年度は、学習支援に携わった協力者とともに、(1)子どもの母語ができる日本人支援者の役割意識の形成、(2)母語を用いた授業実践に対する学校教員の意識変容、そして、(3)在籍級入り込み支援を行った母語支援者の足場かけという三つの観点から分析を進めた。その結果、(1)では、子どもの母語で学習支援を行った日本人支援者が、子どもの既有能力や内容理解の状況を周囲に伝える役割を獲得していったことが明らかになった。(2)では、国際教室担当の教員が母語を用いた授業を協働実践することで、母語を用いることへの不安を感じなくなっただけでなく、自身の教育観や言語観を捉え直していることが示された。そして、(3)からは、在籍級への入り込み支援に際して母語支援者は授業者の説明を単に通訳しているのではなく、子どもの内容理解やストラテジーの獲得に自主的に働きかけたり、授業者や周りの生徒との仲立ち役を果たしていることがわかった。 23年度は、同校での学習支援を継続するとともに、在籍級において言語少数派生徒と日本人生徒の対話活動の充実をめざした授業作りに担当教員とともに取り組む予定である。
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