研究課題
本研究は、中上級レベルの日本語学習者(以下、JSL)の口頭発表技能に関わるメタ認知能力、特に進行モニタリング能力を育成することを目標としてデザインされた教室活動の効果、妥当性を検証することを目的としている。教室活動において学習者は口頭発表で達成すべき目標を宣言してから発表を始める。発表後には目標が達成できたかどうかを受講者が相互に評価し、次回の目標を再設定する。平成22年度においては、平成21年度に確立された授業実践の方法論に基づき、授業を実施し、その実践を通して、受講者の到達目標、受講動機、言語産出に関わるメタ認知知識の表象を収集した。これらの資料に基づき、1)JSLが学習のコース初期段階において、どのようなメタ認知知識の表象を有しているか、2)目標設定、口頭発表、モニタリング、相互評価を通して、JSLのメタ認知知識の表象がどのように変化していくかを分析した。その結果、他者を評価するという活動を通して、口頭発表において気をつけるべき点が意識化され、その結果、自己モニタリング・自己評価の機会が生じている可能性が示唆された。この結果から、発表者にも評価者にもいい気づきが生まれる他者評価活動を繰り返し行うことで、モニタリングの基準の意識化がより促進されることが示された。さらに、目標設定、口頭発表、モニタリング、相互評価を繰り返すことにより、学習者の目標表象と評価内容がどのように変化するかを事例研究の手法を用いて質的に分析した。その結果、相互評価で確認された目標は次回の目標設定では言及されず、課題として言及されたポイントは次回の目標表象に加えられるという変容が観察された。これは、目標設定、遂行、モニタリングと評価、目標の再設定という循環的な自律学習の過程を教室内で学習者が体験できていることを示唆するものである。
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日本語教育方法研究会会誌
巻: Vol.18, No.1 ページ: 52-53
巻: Vol.17, No.1 ページ: 60-61
巻: Vol.17, No.2 ページ: 26-27