日本の工場で働く日系ブラジル人など就労外国人には、在日期間が10年以上と長くなっても日本語の読み書きがほとんどできない人も多い。しかし、従来の日本語能力を測る試験は日本語によって出題されるため、質問文が読めない人は受験することができなかった。そこで、就労外国人が母語で受けられるように、英語、中国語、スペイン語、ポルトガル語および日本語版の試験を作成した。また、問題内容は生活に密着したものにするために、言語使用実態調査を行い、日常的によく目にするものであり、使う必要性の高い項目をリスト化し、試験問題を作成した。 日本語の読み書き能力の判定を工場などで在住外国人269名を対象に実施した。そのうち194名(72%)がブラジルにルーツをもつ人でポルトガル語版試験を受験した。判定の結果、読み書きがほとんどできない0レベルが全体の35%程度を占め、身の回りの限られた文字の読み書きができる1レベルが20%、2レベルが32%で、自立能力を持つ3レベル以上の受験者は非常に少なかった。 試験に関しては、問題数が少ないにもかかわらず、信頼性(クロンバックのα係数)は0.90以上と、十分な水準にあることが確認された。また、マニュアルが整備されているため、テスターによる判定のゆれはほとんど見られなかった。判定結果は、工場内などの日本語教室でプレイスメント・テストとして活用されている。今後、外国人を雇っている企業や商工会議所、ハローワークなどとも連携し、処遇や就職の際の参考資料として活用していけるように拡充・普及を図っていきたい。
|