本研究の目的は、日本語を第二言語、または外国語として学習する人達(以下、「日本語学習者」と表記する)を対象に、日本語の「代用表現」(=人称代名詞、視点名詞である「自分」、および音形を持たない「ゼロ代名詞」を総括してこのように呼ぶ)の使用、及びその習得の実態を詳細に調査し、そこから導かれる結論を実際の日本語教育現場へ活かすための提案をすることである。 日本語学習者が違和感のない自然な日本語を操るようになるためどのような道筋を辿って習得していくのであろうか。また、どのような用法でつまずきやすいのであろうか。これらを実証的に調査していく。 平成21年度は、次のような手順で研究を進めた。 1.被験者の母語では代用表現はどのようになっているのか、各言語(今年度は中国語)の代用表現の特性を対照言語学的に分析した(継続中)。 2.代用表現の習得を扱った第二言語習得研究を詳細に読み進め、これまでの習得研究での成果を明らかにするために、多くの先行研究を徹底的に読んだ。 3.日本語の代用表現を日本語の母語話者が実際にどのように使用しているのかを調査した。さらに、代用表現だけでなく、他の文法項目についてもデータ分析を行った(継続中)。 3の調査では、インタビューテストにより、本語学習者(中国語母語話者)の代用表現の習得調査を行った。しかし、インタビューだけでは、詳細な分析ができないため、別の方法でさらなるデータを採る必要がある。そこで、現時点では、調査方法として、(1)多肢選択テスト、(2)文法性判断テストを考えている。これらの実験方法に基づき、日本語学習者における代用表現の習得のメカニズムを多角的に調査する予定である。
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