・日本語とシンハラ語授与補助動詞文における受益者の格標示として与格と受益者格があるが、それぞれの用いられる範囲は両言語間で必ずしも一致しない。具体的には、物の移動・授受や接触が想定されることが日本語授与補助動詞文における与格標示の受益者を許容する条件であるが、シンハラ語では物の移動・授受や接触が想定されず、具体的な状況がもたらされるだけでも与格標示の受益者を許容する。これにより、日本語の授与補助動詞文において、受益者格(ノタメニ格)の役割が相対的に高くなるのに対し、シンハラ語では受益者格(wenuwen格)の役割が限定的であることが分かった。 ・シンハラ語母語話者による日本語授受補助動詞文の使用状況を分析し、前項動詞の種類により授受補助動詞文が現れる割合が異なり、具体的なものや状況をもたらさない場合には、授受補助動詞文が現れにくいことが明らかになった。 ・スリランカで出版された日本語教科書の授受表現の説明と、スリランカ人教師に対する日本語授受表現の指導について聞き取り調査を行い、いずれも体系的な説明や指導がなされていないことと、最近の対照研究による成果が反映されていないことが分かった。 ・シンハラ人用日本語授受表現指導書を作成し、スリランカ日本語教師会を通じてスリランカ人日本語教師に配布した。この指導書はシンハラ語にも翻訳される予定である。 ・既に作成済みのシンハラ語KWICに改良を行った。従来のものはシンハラ語キーワード検索による前後の文脈を表示するものであったが、両言語の表現の対応関係を見るために、キーワード検索により対応するシンハラ語と日本語の文章と対訳語彙リストを表示する機能を付加した。
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