昨年度(平成21年度)実施のプロジェクトを改良した形で、今年度(平成22年度)も地域の外国語指導助手(ALT)からの協力を得てタスクの基本的考え方を中心にデザインした対話交流プロジェクトを実施した。21年度においては、タスクの産物(outcome)であるプレゼンテーションを学生同士のみの閉じられた授業の場で行ったが、22年度には、ALTにも加わってもらいより開かれた形式で行った。ALTが加わることで、異文化間でのコミュニケーションというコンテクストが設定され、インフォメーション・ギャップが自然発生的に生じた状況での対話のやりとりが行われた。このような対話交流プロジェクトを通して、参加学生は、コミュニケーションを中心とした言語学習がコミュニケーション能力に寄与し得ることを実際の体験を通して実感することができたと思われる。この考察を裏付けるデータとして、プロジェクト実施前後のアンケート調査結果を比較すると、文法規則を教えることを中心として文法的知識を積み上げ文法の正確さを重んじるいわゆる伝統的教授法については否定的な考え方を示すようになり、使っていくことによって言語能力を身につけられるようになるという考え方に対して以前よりも肯定的な考え方を示すようになっていることが明らかになった。この点に、今年度の研究の意義が最も強く表れている。来年度の課題は、どのような教員養成のプログラム内容を構築していくか具体的な方策を講じる点にあると考える。上記のように、学生が使いながら言語能力を高めていくということを学習者として実感し肯定的に捉えることができたとしても、教育実習などの授業で教える立場になった時に、どのようにタスクやコニュニカティブ・ランゲージ・ティーチングのアプローチを授業で具現化させていくことができるかという段になると、今後のさらなる研究が必要である。
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