本研究の目的は、認知心理学における記憶モデル(ワーキングメモリ)の理論的研究に基づき、文字及び音声言語の処理速度と理解の関係について、外国語として英語を学習している日本人学習者を対象に横断的かつ縦断的に研究を行い、(可能であれば)英語の母語話者との比較を通して、その要因の解明を目指すものである。平成21年度は、計画した多様な年齢層における対象者の選出に関して、長期的に安定した条件で協力して頂ける学校を見つけることは難しかった為、パイロット研究の位置づけとして、大学生を対象に一部のテストのみを調査するに留まった。対象は海外の英語圏のある大学に在籍している日本人留学生及び同大学で日本語を学習している英語の母語話者である。言語処理の指標として、ストループテスト及び逆ストループテストの日本語版及び英語版を使用した。両版ともに5色(赤、青、黄、緑、黒)に関する言語及び色パッチをもとに抑制と選択的注意が要求される課題であり、言語習得における「自動化」を示す指標とされている。また、ワーキングメモリ容量の差がストループ課題にも関係しているとされており、本研究では逆ストループ課題も基本的にワーキングメモリ容量との関わりがあるのものとの可能性を模索しながら研究を進める予定である。平成22年度は、よりよい研究が行えるように条件を調整していく予定である。全ての校種を対象に行うことは困難と推測するが、長期的に安定した条件で協力を得られる学校を本格的に絞り込んでいき、データの入手を行う予定である。
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