研究の目的に掲げた(文字及び音声情報の処理速度に関する縦断的かつ横断的研究)内容に沿ってデータ収集を模索したが、東日本大震災以降、データ収集に協力して頂く予定となる多様な年齢層の協力を得られにくい状況が続き、研究内容を大幅に縮小せざるを得ない中での研究となった。具体的な研究概要としては、認知心理学における記憶モデルの理論的研究に基づき、基本的語彙に基づく文字言語の自動化の可能性について、ストループテストと逆ストループテストの日本語版と英語版を実施した。対象者は次の3種類である。1)日本人の大学生:外国語として英語を8年間以上(中学校・高等学校及び大学)学習している学生。2)日本人の小学6年生:英語を教科ではなく「活動」として学校でのみ学習している児童。3)英語の母語話者:日本語を外国語として学習している英語の母語話者で主に大学生。これらのテストに使用されている言語は、それぞれの対象者にとって母国語と外国語である。主な研究目的は対象者内と対象者間において次の3点である。対象者内に関しては、1)母国語と外国語の注意力と選択注意力の相異。対象者間においては、2)日本人の認知発達段階及び英語インプット量の相異による二言語の注意力と選択注意力の相異:大学生と小学生。3)同じ認知発達段階の対象者における英語及び日本語の言語的立場(母国語か外国語)による注意力と選択注意力の相異:大学生。これらの比較分析内容については、2013年の6月にオランダのロッテルダム市で開催されたSociety for Applied Research in Memory and Cognition X(第10回国際応用記憶認知学会)で発表した。今後の課題として、継続的に対象者の確保を要するもので、最終的には多くの対象者を含めた形でのデータの再整理が必要である。
|