科研費研究の初年度であるので、2つの方向から研究を進め、一定の成果を収めることができた。 1つ目は第二言語習得研究の全般についての知識を深めることを連携研究者、研究協力者も含めて、最近の研究動向を示す文献を中心に、分析的に読み進めた。その結果、研究代表者・佐野富士子は、所属する学会(大学英語教育学会)の創設50周年を記念する『英語教育学大系』の第5巻「第二言語習得」の責任編集者に任ぜられ、連携研究者・長崎睦子と研究協力者・原田淳は第5巻の執筆陣として任ぜられた。2011年の刊行を目指して執筆中である。また、佐野富士子は『英語教育学大系』第1巻第2部第5章にも第二言語習得についての章を分担執筆し、2010年2月に刊行した。長崎は、自らの研究成果を学生向けの書物に表す試みも行い、所属する大学の初年度生向けのテキストも共同執筆した。第二言語習得の観点から大学生の英語学習法を解説したテキストである。原田は主に動機付けに関する文献にあたった成果を「英語嫌いと向き合う法」と題して東京私学教育研究所で講演し、講演録に収録された。 2つ目は実際に高校生の英語活動に取り組む際のデータ収集および分析である。2つの神奈川県立高校で協力を得て、英語習熟度の違い、タスク前の意識の違いによる文法学習度および英文作文力の違いを測定した。このデータ分析の結果は佐野・原田および2名の高校教諭・片山浩樹・鈴木聡の計4名の共同発表でまとめることができた。その場での質疑応答を踏まえて、現在論文を作成中である。またこの研究のパイロットスタディの結果は佐野が英国ランカスターで開催されたTBLT2009において口頭発表した。この成果も現在論文化を進めている途中である。 これらの基礎研究と実証研究の成果を2010年度にはさらに発展させ、全国規模の学会と国際学会での口頭発表、および論文3本投稿の予定である。
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