研究課題/領域番号 |
21520575
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研究機関 | 奈良教育大学 |
研究代表者 |
吉村 雅仁 奈良教育大学, 大学院・教育学研究科, 教授 (20201064)
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キーワード | 多言語活動 / 言語意識 / 職員研修 / 教材開発 / 小学校 / 中学校 |
研究概要 |
小学校における日本語教育と外国語教育との架橋となり得る言語意識・多言語活動を提案するため、その教材、カリキュラムの開発及び職員研修プログラムの構築が本研究の目的である。本年度はその3年目にあたり、(1)昨年度奈良県内で実施した実践研究の成果発表(2)中学校レベルでの新たな実践(3)実践者、教育政策関係者、研究者対象の多言語活動国際ワークショップの開催が今年度実績の概要である。以下それぞれの成果について簡単に述べる。 (1)前年度に奈良県内小学校1校の4学年団3名の教諭と協働しながら人権教育カリキュラムの実践を年間通じて行った。そのカリキュラム内で大学側研究チームは多言語活動(合計8回)を担当し、関連する学校行事(中国からの小学生訪問、アジア各国からの留学生訪問など)にも参加した。大学側研究チームの授業時には学年団の教諭も参加し、実践を通じてのワークショップを意図しており、年度の後半の学校行事では小学校教諭のみで言語意識活動をする場面も見られた。この実践については日本国際理解教育学会第21回研究大会(2011年6月18、19日、京都橘大学)及びLanguage Education and Diversity Conference 2011(2011年11月22-25日、ニュージーランドオークランド)で発表を行い、国内外の研究者や実践者からの評価を受けると共に、お互いの取り組みに関する情報を交換した。前者の発表では本活動の実践を担当した公立小学校教諭も共同発表とし、彼女にとっては自分自身の取り組みの意義を意識化することが可能となり、極めて有効な職員研修の場を提供できたと思われる。 (2)国内での実践に関して、大学附属の中学校から多言語活動の依頼があり、初めて中等教育レベルでの多言語活動実践を試験的に行った。新たな試みであったが、予想以上に成果が見られ、この実践に関しては次年度の国際学会で発表する予定である。 (3)偶然ではあるが、欧州評議会等で多元的アプローチの研究者(ミシェル・カンドリエ氏)が年度末に京都大学に招かれており、彼及び本研究にも協力してもらっている慶應大学の研究者(古石篤子氏)と共に、小学校教員、教育政策関係者、研究者などを対象とする多言語活動のための国際ワークショップを開催した(2012年3月4日、慶應大学日吉キャンパス)。30名程度の参加者からの意見からも、多言語活動の有意義な研修となったと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
学校では年度が代わる度に人事異動があり、多言語活動及びその研修に関わる実践を継続することがしばしば困難となるが、これまでは実践に協力してくれる学校が確保できており、新たな依頼が入ることもある。教材開発と共に職員研修プログラムも既に試行的にワークショップ等で示しており、最終年度(2012年度)には総括に入ることができそうである。
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今後の研究の推進方策 |
最終的には多言語活動実践のための教材開発及び職員研修プログラムを開発することを目標とするが、これまでの取り組みから見えてきたことは、固定的な教材や研修プログラムではなく、各学校や地域、教員集団の実情に合わせた柔軟なものを考える必要がある点である。その意味で、開発を目指す教材や研修プログラムはあくまでも、具体的な例ないしモデルととらえ、学校教育現場の教員がその学校や児童生徒の実態に合わせて修正したり、使い方を自分自身で考え直したりすることが可能なもの、職員研修も日時を設定したワークショップ形式のものから、一定期間学校に研究者チームが外部人材として入りながら教材の使い方や授業の組み立て方を学べるものまでを想定するべきだと考えている。
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