本研究の目的は、看護師国家試験を、応用言語学・第2言語習得研究からの知見に基づいて言語分析(意味・統語)を行い、国家試験作成機関、ならびに言語教育への示唆を提供することである。 平成22年度は研究の1年目に行った看護師国家試験問題の言語分析、試験の提示条件の影響分析、学習者の解答ストラテジーの調査の結果を学会および、論文で連携研究者の堀場裕紀江氏と発表した。学会発表は国内は第二言語習得の学会(日本第二言語習得学会)で、国外では日本語教育の学会(世界日語教育大会)、ヨーロッパにおける第二言語習得の学会(EUROSLA)で、また、論文としてまとめて日本語教育学会他に投稿した。平成22年度の発行になるものに聖路加看護大学紀要への2編、神田外語大学大学院紀要への1編がある。 また、4月には厚生労働省の看護課から今までの調査結果についての意見を求められて、報告をした。インドネシア人看護師候補者への調査の結果、試験問題へのルビの効用、専門知識の不足などについて提言した。こういった結果を踏まえ、厚生労働省では8月末に2011年度の国家試験問題の日本文についての改良点を発表した。2011年度の試験から、日本語文が大幅に平易になると考えられたので、本研究の日本語分析は一度中断し、2011年度の新しい試験問題を重点的に調査する方向に切り替えた。 平成21年度の調査結果を22年度に発表し、また、23年度の学会発表の受理の通知を受けている。23年度には、試験問題の改良された日本語文を分析し、その結果を国際学会で発表し、米国の試験問題の英文と比較する予定である。
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