初年度である平成21年度は外国語教育に関するパブリックディスコースのデータベースの構築が主な目標であった。同時に翌年度以降データ分析に用いるQDAソフトウエア(質的データ分析ソフトウエア)の使用法の習得にも時間を費やした。後者についてはまだ発展途上であり、事例も限られていることから、言語学、教育学の域を超え、様々な事例について調査を行った。その結果QDAの1つの特色として、データ収集と同時進行で分析に入りながら、徐々に軌道修正をして行くことが可能でかつ効率的であることがわかったため、後半は当初予定を改め、まず大学牛約180名に対して「日本の外国語教育についてどのような認識をしているか」ということについて、記述式の質問紙法を用いて意識調査を行った。これは次年度以降のより詳細な調査の前段階のもので、現在データの入力を終え、彼らの意識に共通性があるものをキーワードなどから抽出する作業を継続中である。現時点で判明していることは、多くの大学生が外国語教育に関心を示し、そのあり方について何らかの意見を持っているのではあるが、マスメディアから得た情報を意味を分からずに鵜呑みにしていること、そして、それを繰り返すうちに、言説が形成され「正しいもの」として扱われてしまうという現象が、注出したいくつかのケースから分かった。これは研究代表者の以前の論立(Oda 2007)で述ベられているパブリック・ディスコースの形成の過程と一致する。いくつかのケースを事前の見たことにより、結果的にはパイロットスタディーを行ったことになるが、今後行うインタビュー調査などの構成を検討するにあたって大変有意義であった。なお、いくつか取り上げた項目のなかで、特に「教師がネイティヴスピーカーであることの意義」についての反応は、横浜市内の小学校での研究会および、TESOL国際大会(米国、ボストン)で研究報告を行った。
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