平成24年度は本研究の最終年度として、これまでの研究成果を整理し、当初の目的であった「公的ディスコース」が形成される過程とその影響力についてのモデル化を試みた。これまでに収集したアンケートやインタビュー、そしてネット上での投稿、新聞記事、広告などの多様なデータを、これまでに行ってきた共時的な分析ではなく、特に、「公的ディスコース」そしてそれによってつくられる外国語教育に関する「共通知識」の推移を通時的に概観し、それらの相互の関連性をまとめることができた。 しかしながら、本研究のように質的データ分析を主体とする研究にはよくあることであるが、データは当初想定していたよりもはるかに多様であり、また様々な利用価値があるものと考えられる。その1つとして、外国語学習者の「学習観」の変化と学習効果との関係を探るさい、「学習観」に影響を与える外的要因の裏付けとして、本研究のデータベースは大変価値があるものだろう。したがって、今後も継続して別の観点からもデータ分析を行うことは有意義であろう。特に本研究で使用した質的データ分析ソフトNVivoのバージョンアップが予定されているため、今後より効率よく分析が行われることが期待される。 最終年度の目標の1つとして、成果の社会への還元を挙げていた。平成24年度は主として「公的ディスコース」「共通意識」と「学習者」「言語政策」との関係を通時的に研究したものをいくつか発表することができた。4年間の成果のまとめについては、すでに投稿中の論文もあるが、発表および論文執筆は今後も引き続き積極的に行う予定である。
|