日本でどれぐらいの職種で英語が必要であるのか、また必要であれば、いつ、どこで、どのような理由で、またどのような頻度、どのようなスキル、どのようなレベルの英語が必要なのか、英語が必要であると一般に思われていない職種において、英語の使用実態を調査するとともに、職種別の英語使用場面をビデオに収め、それを編集して動画教材を既存のものに加えて増やし、日本の英語学習者のモチベーションアップを図ると同時に、日本の英語学習者が将来の計画や職業選択とともに、自ら英語を学ぶ意義を深く理解することを目指して本研究を進めた。本年度は医療関係、鉄道関係、美容関係、食品関係のものを作った。また、本動画教材を用い、学習者のキャリア選択とともに教室を様々な職業に就く社会人が集まる場と捉えて、英語教育をスキルのみならず、他者への配慮を考えた全人的なコミュニケーション教育を行った。その結果、学習者の英語学習へのモチベーションは飛躍的に上がり、英語力も他者への配慮をもったコミュニケーション力として向上を見せた。本研究の成果は、分割する形で、著書やシンポジウムの総論等において発表した。本研究は高等学校の教員からも評価を得た。高等学校では現在、AO入試等、昨今の大学入試の多様化によって多くの生徒が英語より小論文の勉強に力を入れ始め、日本における英語学習へのモチベーションが英語使用より、いかに入試に頼ってきたのか露呈しつつあり、生徒の英語学習へのモチベーションが学力とともに低下しつつある。日本の大学生のみならず高等学校の生徒にも、本来的な意味での英語学習の意義と重要性を教えることができるものとして本研究は評価を得た。また、CLTにヒューマニズムを加えた英語教育を展開する中国の広東外語外貿大学の教員と意見交換をし、ここでも評価を得たほか、2010年度に開かれる複数の国際学会からインビテーションをもらったことで、キャリア教育と連動した英語使用場面の現実を集めた動画教材と単なるスキル教育ではない全人的な教育は、日本のみならず、外国語教育としての英語教育という分野において国を超えて効果が期待され得ると考えられる。
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