第2言語習得に関連する発達心理学・認知科学の分野における先行研究の調査を行うとともに人間の推論プロセスに関しても基礎的文献から先行研究の議論を理解し、そこから自己の理論を構成する作業を始めた。この初期的見解に関して他の研究者からのフィードバックを得ることに努めた。また、具体的な教育事例を観察するために国内の早期英語の先進的機関を訪ね教育実施担当者から意見を聴取するとともに、その成果と問題点を整理した。以上の成果を、全国英語教育学会、近畿大学公開講座で発表した。また、自己の理論的見解を『国語からはじめる外国語活動』という書籍に共著者としてまとめた。具体的な研究内容と成果については、(i)第二言語学習時に観察される即時習得現象を説明するためには仮説形成的な推論を想定しなければならない、(ii)子どもたちの外国語学習において孤立した連合形成や文法指導中心の演繹的学習方策に基づく学習のとらえ方では不十分であり、強力な認知的学習メカニズム、すなわち『心の理論」 「パターン発見能力」「仮説形成推論能力」などを前提とした新しい言語学習観の構築が望まれる、(iii)早期英語学習ではホリスティックな教材提示と指導が求められ、いたずらに演繹的な理屈に偏った学習事項積み上げ型の指導方針は見直されなければならない、というような論点が含まれる。
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