第2言語習得に関連する認知科学の分野での最新研究の調査を行った。人間の推論プロセスに関して仮説形成推論の果たしている役割についてさらに理解を深めた。また他の認知理論との整合的組合せの可能性についても検討した。そこから得られた第2言語習得論の実際の英語授業での応用可能性を検証するため、東大阪市立孔舎衙小学校で15時間の授業を実施した。その授業実施から得られた知見を理論の改良へとフィードバックした。研究成果の発表として以上の理論化された見解を日本SLA学会(岐阜大学)、オーストラリア応用言語学会(クイーンズランド大学)で研究発表し、研究者や実践教育者たちから肯定的評価と批評を頂いた。それらの意見をよく吟味した上で、自分の理論構築の改良、調整に活用した。また研究成果の還元に関しては、昨年10月の公開講座において小学校で先進的英語教育を行っている教諭グループ、さらに文部科学省の調査官も交えて理論と実践、現実に小学校での外国語活動でできること、なすべきことをテーマにとりあげ議論した。フロアには小学校教諭、英語教育関係者、一般市民など約100名が参加し活発な議論が展開された。 研究内容と成果について具体的に述べると、(i)「心の理論」と推論能力をまず認知的言語習得の基本装置と考えてよい、(ii)子どもたちの外国語学習においてはこの認知的装置を効果的に利用する手立てとして身体化された認知経験が必要であり、それにはジェスチャーなどが有効であること、(iii)さらに社会文化理論的な言語学習理解を教室環境に取り入れる必要性、などをあげることができる。 このような研究内容と成果は「意味に基づく英語文法教育論」、「第二言語習得論の新展開」という2篇の論文にまとめた。
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