第2言語習得に関連する認知科学の分野での研究を深めると共に、英語の文法項目において日本人学習者が苦手とするもの(名詞の可算性、不可算性、時制、アスペクト等)を効果的に教えるために認知科学的理論がどのように使えるのかを探究した。人間の学習プロセスに関して仮説形成推論の果たしている役割を確認するとともに身体化認知経験に基づく学習が第2言語学習には有効であることを検証した。言語教育の基盤として、心の理論、仮説形成推論、身体化認知とジェスチャー、社会文化理論的な協同的枠組み作りが必要であり、それらの概念を日常の言語授業に取り入れるための教授プランを検討した。このような統合的な第2言語習得論の実際の英語授業での適用可能性を検証するため、担当する応用言語学の授業で実験を繰り返した。このような授業実施から得られた考察を理論の改良へとフィードバックした。研究内容と成果について具体的に述べると、(i)「心の理論」と推論能力をまず認知的言語習得の基本装置と考えてよいこと、(ii)外国語学習においてはこの認知的装置を効果的に利用する手立てとして身体化された認知経験が必要であり、それにはジェスチャーなどの身体表現が有効であること、(iii)さらに社会文化理論的な協同的言語学習環境を教室に取り入れる必要性があること、(iv)また特に日本人学習者にとって共通する問題点である名詞の可算、不可算性、時制、アスペクトを効果的に指導するには認知言語学的方法が有効であることなどを明らかにした。 このような研究内容と成果は「意味に基づく英語文法教育-動詞、アスペクト、時制篇-」という論文にまとめた。
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