研究概要 |
研究代表者・分担者の3名が協力して,外国語学習のための脳内ワーキングメモリに関する学術専門書,雑誌,研究論文の収集を行い,それらの中から,特に「リスニング・スパン」測定に関わる先行研究を参考にして,ワーキングメモリの容量を測定する独自の方法を開発したことが本研究の成果である。また,その成果を2009年12月山口大学において開催された「山口大学英語教育研究会」において発表した。具体的には,まず,Course Management SystemであるMoodle上に,学習者が聞き取った英語文を添削させるWBTプログラムである「KDシステム」を埋め込んで,ディクテーション活動を反復的に行わせた。「KDシステム」には,学習者がある程度の長さの英文を聞き取ると,その解答の添削をサーバに要求し,その度にサーバ側に学習者ログ(実際に聞き取った英文)が残るような機能が付加されており,そのログを解析することにより,最終解答に至るプロセスと各問題解答に要した添削回数を把握することができる。「KDシステム」による演習は「英語文の音声を単語として識別する」作業と「英語文の音声を短期記憶する」作業を同時に行わせるワーキングメモリを駆使する作業であり,各学習者のワーキングメモリ容量は,その添削試行回数に反比例すると予想される。これに,問題文の単語数および最終的な正解率のデータを関係づけ,ワーキングメモリからリスニング成績を予測する方法を案出した。本研究の成果は,ログを多角的に解析することにより,学習者のワーキングメモリ使用の実態を明らかにし,効果的ディクテーション演習開発に寄与する点で意義がある。
|