本研究は日本人英語学習者(JLE)の中間文法における名詞の[数]の知識と形態上の表出との関係について実験的手法により調査しようとするものである。前半に名詞句の[数]素性と単・複の形態上の区別(-φ/-s)についての知識の習得について調べ、後半には主語名詞句の[数]が動詞の屈折形態に正しくマッピングされる(あるいはされない)文構造上の条件を異なる習得レベルのJLEを対象に実験により調べることで、「動詞の屈折(いわゆる『3単現の-s』)の習得がJLEにとって著しく困難であるのは動詞の一致素性の習得に問題があるからである」とする申請者の最近の研究(Bannai 2008)での提案をさらに詳細により発展した形で検証する予定である。平成22年度は平成21年度の予備実験結果(文主語名詞句に数詞などの限定詞を含む文について、JLEがその「数」と動詞の形態(3単現の-sの有無)とをどのように処理しているかを自己ペース読解タスクにより調査した。結果は、JLEが文主語名詞の「数」を処理する場合には数詞などの限定詞がある場合には「数」が認職されやすく、動詞の形態との(不)一致の認職にもつながり安いことが分かった。)を論文にまとめる作業をしてきており近日国際的な論文誌に発表される予定である。また予備実験結果を踏まえ、実験を詳細に見直し、限定詞の「数」と名詞の「数」の一致についての実験を行ってきおり、今後は予備実験の結果と合わせて日本人英語学習者の中間文法における[数]の知識の実態について考察を深めてゆく。
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