研究概要 |
本研究は,学校現場で求められている「コミュニケーション能力」育成のための効果的な言語活動を提案するものである。具体的には,第二言語習得理論研究の分野で注目されている「タスク」を取り上げ,その中でも,意味内容の伝達を中心としながらも,ある特定の文法構造・言語的特徴を引き出すようにデザインされているfocused tasksである「タスク活動」(高島2005)に,定着を促進するために,dictogloss (Wajnryb 1990)を連動させることの有効性を,実証的研究を基に明らかにしたことは意義深い。 検証授業では,4つの選択肢から選択する文法テスト(multiple-choice communicative grammar test)として,pre-test, post-test, delayed post-tests,そして,同様にスピーキングテストI, II, IIIを実施した。 本年度は,これまで実施した3つの検証授業の結果より,「タスク活動の後にdictoglossを実施」したグループの方が,文法テスト、スピーキングテスト(特に正確さ)において,「dictoglossの後にタスク活動を実施」したグループや「タスク活動の後に練習問題を実施」したグループよりも、統計上有意差が見られた。これは,タスク活動とdictoglossの特徴である,「2つ以上の構造の比較があること」により,混同しやすい文法項目と対比させながら実際に使用し,意味の違いを明確にでき「言語形式の認知比較」が行われたためと考えられる。加えて,dictoglossでは,英文をまとめる段階で,より形式への注目を要する活動であり,学習者のメタ認知能力が要求されることも挙げられる。タスク活動という現実的な言語使用を体験させることで,言いたくても言えなかったことに気付いたり,また,通常でのフィードバックを通して学習者のinterlanguageと目標言語との間のギャップに気付くことができ,その後,dictoglossの活動を通して明示的な「言語形式の認知比較」を行うことで,目標文法項目に関して深い理解がなされ定着につながったものと考えられる。
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