研究課題
本研究の目的は、日本人EFL(外国語としての英語)学習者を対象に、文の構成要素(単語、命題)からどのように文章全体の理解を反映する心的表象(mental representation)が構築されるのかを明らかにすることである。初年度は、これまでの研究成果を次の2点にまとめた。先ずは、詳細情報からのマクロ命題の理解と再構築過程の検証を行った。日本人EFL学習者(大学生)を対象とし、テキスト全体のメインアイデアを示すマクロ命題が明示されていないテキストと明示されているテキストを提示した場合に、メインアイデアの理解(マクロ命題の再構築)にどのような相違があるかを検証した。次に、明示情報の理解から状況モデルの構築過程の検証を行った。英文和訳課題(明示的情報の理解を反映)、リコール課題(構築された状況モデルを反映)、要約課題(マクロ構造を反映)の比較を通し、低次でのつまずきが高次の理解(状況モデルやマクロ構造の構築)にどのような影響を及ぼすかを検証した。その結果、次の3点が明確になった:(1)日本人EFL学習者の場合も母語話者の場合と同様に詳細情報を統合し狭い範囲の主題に対応する表象を構築することが可能であるが、文章全体のテーマに対応するような上位階層の表象を構築することができないにと、(2)単語知識の不足や統語的な理解の欠如により、テキスト全体の理解を反映する状況モデルの構築が出来ないこと、(3)テキスト内の重要な情報が必ずしも隣接する情報と結びついているとは限らないことから、距離的な近さではなく情報そのもののつながり(階層性)を明確にする必要があることである。しかし、これらの研究は情報の処理単位を統語的に区切ったアイデア・ユニットに定めた結果から論じるものであった。研究成果を一般化する上でEFL読解における情報処理単位が母語と同じく命題単位であるかどうかを明確にする必要かおる。
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ARELE (Annual Review of English Language Education in Japan) 21(印刷中)
JLTA Journal (The Japan Language Testing Association) 12
ページ: 104-115