研究概要 |
本研究の目的は,(1)英語教育研究におけるナラティブ・アプローチの研究手法の精緻化,(2)ナラティブ生成を支援する電子ポートフォリオの開発・改善,(3)教師のナラティブ・アプローチの経験と教室での授業実践の変容の相互作用の解明,であったが,研究期間の最終年度となる本年度は,特に,(3)について研究推進し,最終的な成果のとりまとめを行った。 具体的には,研究協力者となった中学及び高等学校の英語教師が作成したナラティブ・データを分析し,教師の英語教育実践の経験がどのようなメタファーや言語によって意味づけされているのか,また,教師自身の実践に対する認識や洞察が,ナラティブの中でどのように変容するかを社会文化的理論の見地から明らかにすることであった。研究の性質上,大量のナラティブ・データの収集はしなかったが,実践について綴るといった行為及びその質的な分析を通じて,教師自身の認識が変容し,そのことが教室での生徒とのインタラクションや指導法の変化に結びつくことが明らかになった。その際,研究者や教師教育者がナラティブを介して教師と対話的な活動に従事することで,教師自身の認識の変容を促進することも示された。このことは,社会文化的理論の枠組みでは,教師教育者と教師の間に適切な発達最近接領域が生成されたことを示すものとして説明される。 研究の成果については,平成23年8月に中国・北京で開催される国際応用言語学会議(AILA)などで発表を行い,成果の一部が,関西英語教育学会紀要Studies in English Language Teaching第35号に掲載された。さらに,2012年12月にRoutledgeから出版予定のLanguage Teachers and Teaching:Global Perspectives,Local Initiativeに掲載される。
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