本研究では、米軍基地の存在が県民のアイデンティティ、地域社会の内外における「英語の役割」の捉え方、英語学習の動機づけにどのように関係しているのかを調査した。平成22年度においてアンケート回答が十分集まらなかったため、最終年度の前半もデータ収集を継続した。しかし、「米軍基地」や「英語教育」の文言から敬遠されることが多々あり、予定の半分程度の回答者数であった。アンケート結果の分析は、研究計画で予定した地域と年齢による特徴は対象者が十分でなかったため独立変数とすることができず、「軍雇用者」(128名)と「非軍雇用者」(153名)のふたつの被験者集団についてクロス集計と因子分析を行った。 因子分析の結果、4つの因子に分けられた。因子1を「米軍基地の教育的影響」、因子2を「外国人との関わり」、因子3を「グローバル社会における英語学習」、因子4を「基地問題を発信するための英語学習」とした。因子3と因子4のクロス集計の結果、軍雇用者のほうがより英語学習の必要性を強く認識していることがわかった。彼らの60%が、地域で起こる米軍基地関連の問題(犯罪など)を解決するために英語が有益であるという見解を示した。また、アンケートに参加した沖縄県民の87%が「沖縄人」としてのアイデンティティを持っていることがわかった。しかし、「沖縄人」というアイデンティティと米軍基地の存在が特に沖縄県民に英語学習の必要性を認識させているわけではないことも明らかになった。結果から、沖縄県民は基地問題を外へ向けて発信する道具として英語をとらえておらず、英語学習の動機は「国際語だから」という理由であると結論づけた。 フォローアップ・インタビューを予定していたが、代表者に年度途中で所属の移動があったため、インタビューが予定より大幅に遅れた。参加に同意したのは10名のみであったが、現在テキスト分析の途中であることも併せて報告する。
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