本研究は、教室外で英語を書く機会がほとんどない日本の大学生が、大学授業内で一年間毎週10分間のtimed writingを行った場合、ライティングにどのような変化が現れるのかを、書かれたテクストや内省文の分析によって明らかにすることを目的とする。この研究は3年間行うものであり、2010年度はその2年目である。研究実施計画では、主にデータベース構築と量的分析を行うことが目標であった。以下、交付申請書に記載した項目にしたがい、それぞれについての成果を述べる。 (1) 採取したデータのデータベース化、および量的データ分析 1年目に採取した作文データはすべて電子化し、コンピュータツールで分析できるように加工した。Coh-Metrixというツールを用い、このデータベースを様々な角度から分析した。この結果、作文における流暢さよりも文構造の多様性に顕著な進歩が見られることが判明した。この成果はまずFLAIRSという学会において、Coh-Metrixの開発者たちを含むコンピュータによる言語分析の専門家に向け発表した。我々の研究は好意的な評価を受け(学会に採用された論文168本中我々の論文は総合で9位、応用自然言語処理の分野で2位の成績だった)、また有意義な助言を得た。その他にもBAALという国際学会でも研究成果を発表し、さらに研究代表者は名古屋大学国際開発研究科で国内研究員として招待され、2回の講演を行って本研究を紹介するとともに、専門家からの意見聴取を積極的に行った。これらの活動を通じ、条件を変えたデータ収集(データベースの拡充)の必要性を感じたので、2年目も引き続きデータを収集した。 (2) 質的分析 上記の量的データ分析に予想以上の時間がかかったので、作文の質的分析には着手したものの、すべて終えることはできなかった。さらなる作文、内省文、インタビューの分析は3年目に重点的に行う予定である。
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