研究概要 |
本研究は、教室外で英語を書く機会がほとんどない日本の大学生が、大学授業内で一年間毎週10分間のtimed writingを行った場合、ライティングにどのような変化が現れるのかを、書かれたテクストや内省文の分析によって明らかにすることを目的とする。この研究は3年間行うものであり、2011年度はその最終年度である。研究実施計画では、主に統合的分析と研究成果発表を行うことが目標であった。以下、交付申請書に記載した項目にしたがい、それぞれについての成果を述べる。 (1)統合的分析 前年度に行った量的・質的分析の結果を統合し、実際の授業において10分間のtimed writingタスクの繰り返しがどの程度実際の英語授業で妥当かを統合的に考察した。統合的に考察するための確立した手法がないため、いくつかの方法を試みた。例えば、クラスを一つの単位とし、視覚的分析に主眼を置く方法(Baba & Nitta, 2010, 2011)、少数の個人に焦点を当て、視覚的分析と量的・質的分析をすべて組み合わせる方法(Baba, 2011)、そしてクラス全体と個人を対比する方法などである(Nitta & Baba, in press)。これらの方法は、研究成果発表へのフィードバックを得ながら今後さらに発展させていく予定である。 (2)研究成果発表 本研究に基づく研究成果は、現在までで5本の研究論文(1本の印刷中論文含む)、6回の海外学会発表、そして2回の招待講演として発表した。また、現在1本の論文を執筆中、さらに1本を構想中である。学会発表では関連分野の研究者から毎回かなり好意的な反応を得、学会発表をきっかけに本の一章の執筆を二度依頼された。第2言語習得分野をリードする研究者の一人であるLordes Ortega教授も我々のアプローチを「強力だ」と評価した。我々は今後いくつかの論文を学術雑誌に投稿し、このアプローチの有用性を強調する。
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