2011年6月、8月、9月、2012年1月に、代表者と分担者がモンゴル国立図書館およびモンゴル国立中央文書館で古地図、境界報告書(cese)および関連資料の閲覧と複写をおこなった。モンゴル古地図の代表的コレクションであるドイツ・ベルリン図書館所蔵の地図は、おおくが20世紀はじめの比較的あたらしい地図なのに対し、モンゴルでは19世紀前半の地図と関連資料が利用できるので、これらの史料をつかって清代における地図作製法の変遷、中央政府の方針の変化をあとづける作業をおこなった。その結果、地図の作成に関しては、時代をおうごとに指示の内容がこまかくなり、地図の縮尺についても統一的な規則が導入されたこと、境界報告書に記入する境界標識間の方向・距離に関する記述が精密になっていることが明らかになった。また中央政府のモンゴル地域に対する政策の変化が、地図作成に反映されていることが確認された。 2011年8月14日にウランバートルのモンゴル・日本人材開発センターで、本研究を総括する国際ワークショップ「清代とボグド・ハーン政権時代のモンゴルにおけるてがき地図の伝統-地図学と地名学」を開催した。本ワークショップでは、代表者が「鳥居龍蔵のハルハ東部への旅行と日本で作成されたモンゴル地図」、分担者が「権力と地図-19世紀後半、20世紀はじめのモンゴル地域に対する行政の視点」のテーマで報告したほか、モンゴルの代表的地図・地名研究者6名も報告し、活発な議論がおこなわれた。今回のワークショップは、モンゴル地図研究をテーマとしたはじめての本格的な国際会議であり、おおくの参加者から肯定的な評価をえた。なお会議のProceedingsは、2012年に刊行される予定である。
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