本課題の目的は、中国・韓国・台湾等東アジアにおける古代音楽文化の研究にある。その資料とすべきは、これらの地域の図像資料であり、これらの実地調査により、資料蒐集整埋し、文献研究とつきあわせての検討が必要である。中国では昨年度は蘭州・炳霊守・麦積山など河西地域甘粛省での魏晋墓・石窟での調査であったが、今年度は平成22年9月4日~9月12日に遼寧省藩陽とその周辺における魏晋墓画像磚・壁画等にあらわされた音楽関係資料の調査研究、続いて吉林省集安において、中国の影響を受けた高句麗古墳群に画かれた壁画資料等による音楽関係資料について調査研究し、多くの資料を蒐集した。藩陽周辺における魏晋墓に画かれた楽器資料は僅かだが、集安の高句麗関係資料では河西地方と共通する特色が見いだせ、藩陽周辺魏晋墓においても同様な特色が推察される。平成23年2月17日~21日には台北の故宮博物院を中心に、中国本土からもたらされた古代音楽資料の調査研究とともに、先住民の祭等の習俗と音楽の果たす役割などに関して学ぶことができた。前者においては昨年度の調査資料に多くの追加資料を得ることができた。同年3月8日~13日には韓国慶州・大邱において調査研究を行った。昨年度は扶余等百済関係の調査であったのに引き続いて新羅関係の音楽文化の調査研究を行った。平成22年2月蒐集の百済関係資料、同年9月の集安での高句麗関係資料と比較すると、百済とは共通する傾向がみられるが、高句麗とは異なっていることが窺われる。 以上の通り、本年度においても、従来の計画通り、中国、台湾、韓国での実地調研究を行い、多数の古代音楽関係文化資料を獲得し、多くの知見を得ることができ、極めて有意義な研究調査を行うことができた。その成果の一部は雑誌(『西北出土文献研究』)に発表予定(2011年4月発行予定)。
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