本年度は、本研究の初年度である。主に古代日本の親族、家族制度に関する法的規定、法的解釈を中心に史料調査、史料分析を行った。具体的には二段階に分けて行った。 前半は、主に唐令(復元された条文のみ)と日本令-大宝令、養老令-にある家族、親族、婚姻に関する諸規定の比較を行った。特に注目したのは、親族組織と等親制、経済所有と財産相続、家庭秩序と嫡庶制、父子の政治的地位の継承と蔭位制である。大宝令は平安中期頃にはすでに散逸していたが、『令集解』の古記によってある程度その原型が窺えるので、養老令と比較し、従来言われている養老令の「字句修正」の歴史的意義を再検討した。古代中国と古代日本の両社会の親族組織、経済所有形態、婚姻形態の相違による改変は、大宝令においても養老令においても見られるが、両令は必ずしも同じ方針ではなかったことが判明した。 後半は、主に九世初頭から十世紀中頃にかけて制定された、律令の施行細則としての格、式(『弘仁式抄』、『類従三代格』、『政事要略』、『弘仁式貞観式逸文集成』、『延喜式』)の現存条文、律令注釈書(『令義解』、『令集解』)、十二世紀から十三世紀にかけて成立した『法曹至要抄』、『裁判至要抄』および明法勘文を調査し、さらに鎌倉、室町時代に成立された一連の武家法(御成敗式目、建武式目)を調査した。現在調査結果を論文に纏めているところである。
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