研究初年度である今年度は、これまでの研究動向の把握と史料収集につとめた。 2月にはイギリスにおいて史料収集を行うとともに共同研究者でロンドン大学のシーハン教授と19世紀後半のアジアにおける奴隷制の実態やヨーロッパの反奴隷制運動の影響についての史料や研究動向について意見交換を行った。同時に、歴史学研究所にて奴隷制についての研究者とディスカッションした。 近年、反奴隷制運動についての研究は非常に活発であるが、反奴隷制運動と他のソーシャル・リフォーム運動の思想的関連を問うものはそれほど出ていないこと。しかしながら、イギリスとそれ以外の地域の反奴隷制運動の関連を考える上で、反奴隷制運動以外のソーシャル・リフォーム運動の動向、関係も非常に重要であることが確認できた。とりわけ、運動のなかでの女性のかかわりの重要性はつとに指摘されていながら、具体的な役割、思想的な特性について、とくに19世紀後半にかけての時代についての研究が手薄であることが分かった。来年度は、女性宣教師など、19世紀後半、ヨーロッパとヨーロッパ以外の世界双方で活動した女性たちが奴隷制の在り方についてどのような姿勢を見せいていたのかについて検証していきたい。
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