18世紀末から19世紀にかけてイギリスをはじめとして欧米諸国では、どのような権利意識、人権概念の変化がみられたのかについて、反奴隷制運動を手掛かりに研究した。結果、階層として凝集しつつあったミドル・クラスの人びとが特有の価値観を普遍化しようと展開した反奴隷制運動をはじめとする様々な社会改良運動を通して、とくに大西洋をまたいだ奴隷制廃止運動は、19世紀半ばをもって終息していくが、この運動の中で形成されてきた新たな価値観はその後ミッション活動などのかたちで奴隷制度が欧米以外にも拡大していき、近代的価値観のベースとして世界的に受容されていく。本研究はそのプロセスの一端を明らかにしようとするものである。
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