本年度は、第一に、戦時期の広域経済圏構想すなわち「大東亜共栄圏」の経済的側面に関する構想について、政府・財界・学界などの機関や団体、個人の研究者が立案したものを収集することに努めた。具体的には、大東亜省、東亜経済懇談会、国策研究会などの資を収集するとともに、個別の研究者や企業、ジャーナリストなどが当時において発刊した図書を把握し、できる限り入手するように努めた。そして、それらの書誌情報をデータとしてまとめた。 第二に、収集した資料や図書のうち、国土計画について広域経済構想との関連から分析を行った。当時の国土計画は、「大東亜国土計画」の一部であることを前提にしている場合が多く、広域経済圏構想と密接な関係にあったことがわかった。産業配置、人口配置などは、「大東亜共栄圏」全体の中で構想されており、企画院、商工省、内務省、民間などで立案されていた。広域圏構想では一括りにされがちな日本国内における各地方の計画や構想が、国土計画では明らかにできるので、両者の関係に留意して分析を進めることによって、特徴をさらに明確にできると見通している。 第三に、収集した資料のうち、国策研究会が立案した構想について、その作成過程について調査を行った。国策研究会の経済圏構想は、扱う分野も広く内容も詳細で、この時期の構想としては最も包括的なもののひとつである。それは、国策研究会がアジア太平洋戦争開始後に「大東亜問題調査会」を設置し、そのもとに多くの分科研究会を設けて部門別に調査研究を行ったこと、さらに有力な調査機関や財界団体と共同で研究を進めたことによる。したがって、今後、国策研究会の構想内容を詳細に分析ることにより、この時期の経済圏構想の諸相について、基準を設定することができるようになると考えている。
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