本研究は、近代日本の地方自治と行政制度の歴史の中でも、これまで十分な研究がなされてこなかった都市制度に関する基礎的研究を行うことを課題とした。これまで、近代日本の都市制度研究といえば、1889年の市制施行以降を対象にするものに限られており、それ以前の都市制度についての関心は弱い。そこで本研究では、近世から近代初頭にかけての都市制度を検討する。具体的には、1878年に制定された郡区町村編制法の中で、近代日本の都市制度として初めて創設された「区」に着目し、その実態を明らかにしようとした。 そこでまず、京都・東京・金沢などで予備調査を実施し、史料の所在状況に見当を付けた上で、全国の主要都市について本格的な調査を実施した。調査はまず書類や電話などで関係する行政文書などの所在状況を確認し、手がかりを得られた都市から順次訪問調査を行った。調査を実施した主な都市は、前述の都市以外では、名古屋・仙台・秋田・新潟・静岡・熊本などで、とくに仙台・金沢・新潟などでは貴重な文書類を見つけることができるなど、大きな成果を得た。 ただ、いくつかの都市では史料に関する情報を得ることすらできず、調査を行うことができた都市でもその保存状態は十分といえるものではなかった。そこで、文書の保存や公開などの実態を考える上で、参考となる地域の調査も並行して行い、各地で意見交換も行った。
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