研究課題/領域番号 |
21520670
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
岩崎 奈緒子 京都大学, 総合博物館, 教授 (80303759)
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キーワード | 鎖国 / ロシア / 松平定信 / 蘭学 / 蝦夷地政策 / 華夷観念 |
研究概要 |
本研究は、松平定信の著述及び蔵書を主な素材として、定信の世界観と国家意識を明らかにしようとするものである。近年の研究では、18世紀後半以降のロシアの日本北辺への進出に直面して、近世初期に形づくられた対外関係の枠組みが「鎖国」としてとらえ直され、外交秩序の再編がなされたことが明らかにされている。しかし、その再編をささえた思想・意識のありようについては、まだ未解明のまま残されている。 近世初期に形作られた外交秩序を支えた華夷観念が、ロシアの進出に直面してどのように変化したのか。18世紀後期に突如現れたロシアという未知の国家を、日本はどのようにとらえ、自らをどのように対峙させようとしたのか。より具体的には、この大きな転換の時代に、政権の座にあって、ロシアと現実に対峙した松平定信を素材として、寛政期に始まる対外関係の再編を支えた意識の解明を進めることが本研究の目的である。 この目的に従い、文化年間の定信の著作「秘録大要」の中に付された書目リスト「集書披閲」を対象にした研究を進めた。「集書披閲」は、子孫に対してロシア学習をすすめる定信が、学ぶべきテキストとして選定した書物をリストアップしたものである。32点を越える書物1点1点の読解をほぼ終えることができた。この作業を踏まえ、定信が老中職にあった寛政段階の対外政策とそれを支えた世界観と国家意識の解明をすすめているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定した分析は、ほぼ終了し、まとめる段階にきているが、最初に投稿した論文が採択されず、その書き直しで、大幅に時間をとられたため。幸い、採用が決定し、次年度に発表される予定である。
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今後の研究の推進方策 |
定信が老中職にあった寛政段階の対外政策とそれを支えた世界観と国家意識の解明に関わり、今年度中に新たに二つの論文を発表するべく、作業を進めているところである。計画遂行上の問題は特にない。
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