本研究の特色は、寛政期の対外政策を、当該期を世界観の変容というダイナミズムの中に位置づけた点にある。具体的には以下のことが解明できた。 (1)蝦夷地政策に積極的であった田沼期と蝦夷地幕領期との間に位置する寛政改革期は、蝦夷地政策を展開させる重要な一段階であった。 (2)対ラクスマン外交は、むしろ、日本の伝統的な対外関係のあり方に即して策定された (3)定信はロシアに対する深い知識を背景に、礼節を持った法治国家、すなわち、文明の国として、ロシアに対し日本を対置した (4) 「鎖国」の観念がナショナリスティックな色彩を帯びつつ、日本の国是として定着する契機は、日露紛争という近世日本が初めて遭遇した深刻な対外的危機にあった。
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