研究課題/領域番号 |
21520672
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
木村 修二 神戸大学, 大学院・人文学研究科, 非常勤講師 (10419476)
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研究分担者 |
松下 正和 近大姫路大学, 教育学部, 講師 (70379329)
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キーワード | 歴史的景観形成 / 灌漑水利 / 災害文化 / 地域秩序 / 前近代日本 / 分水 / 災害モニュメント / 兵庫県 |
研究概要 |
本研究においては、兵庫県域を中心とする近畿エリアにおける地域史料の研究・分析を通して、地域の歴史的景観・地域秩序の形成にその地域独自の災害文化が深く関わっていることについて一定の解答を得ることを最大の目標に据えている。 本年度は、昨年度までに行ってきた調査・研究をベースに、前近代に発生した災害とその対策に関する文献資料の調査を集中的に進めた。また、同市内では洪水を中心とする災害モニュメントの調査を丹波市内に集中する形で進めた。丹波市内に集中したのは初年度より進めてきた同市内での文献史料調査が進んできた結果であり、今後史料に基づく研究の深化が見込めるようになった。また、兵庫県北部但馬地域において円山川水系沿岸に存在する災害モニュメントの調査、および文献史料の調査を実施した。さらに、初年度より進めてきた水利分水施設の調査のエリアを淡路島内に求めて、調査をおこなった。 上記の調査・研究を進めるために、丹波市内の八木芙瑳子氏、田中耕作氏、青木雄一氏、吉見勝弘氏、中澤敏氏、青木正文氏、佐中ますみ氏、飯谷幹夫氏、常勝寺、達身寺、丹波市山南町金屋自治会、丹波市山南町谷川自治会、淡路市内の高田知幸氏、および豊岡市教育委員会より調査協力をいただいた。また本研究を進めるために研究協力者として、昨年に引き続き、森元純一氏(岡山県和気町教育委員会)を迎えるとともに、新たに河野未央氏(尼崎市立地域研究史料館)、中岡宏美氏(吹田市職員)にも協力を仰いだ。 2011年12月には共同研究者・協力者とともに研究会を開催した。ここでは、研究代表者の木村以下、共同研究者の松下、研究協力者の森元純一氏、河野未央氏、中岡宏美氏によってそれぞれ専門とする分野に関する報告が行われ、報告の後に行われた討論の場での意見・助言をいただいた。これにより本研究関係者の間で、本研究の方向性について理解を深め、共通認識を持つことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、兵庫県内の各地・各流域に調査フィールドを拡げる目標を掲げていたが、結果的に丹波市内に集中する形となったため、目標という点からみれば遅れているようにみえようが、これは丹波市域での調査・研究の深化も同時に示しているので、必ずしもマイナスとは捉えていない。むしろ今後、他地域でも展開してゆくうえで丹波市での調査方法や経験が寄与するところが大きいものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
とくに推進方策や計画に大きな変更はないが、2011年3月11日の東日本大震災とそれにともなう津波災害の発生後に、学界はもとより社会に与えた大きな反響として、歴史災害への注目ということがあった。兵庫県内でも過去に歴史災害が多発しているが、それら歴史災害が本研究の主題でもある「災害文化」形成にいかに影響しているかをこれまで以上に意識して今後の研究に取り組む必要を感じた。災害モニュメントは過去の人々が現に発生した災害をダイレクトに今日のわれわれへ伝えるために設置してきたものである。また、地域に残された文献史料には、災害そのものや災害復興へ向けた取り組みの過程において作成されたものも多い。つまり、災害資料は過去の災害経験の結晶であるという見方ができる。こうした見方をもってすれば、将来的には当該地域での防災にも寄与することも可能となるものと考えるが、今後は調査の対象となった地域において調査成果をなんらかの形でプレゼンテーションするよう務め、本研究の成果が地域の防災にも寄与できるように図っていく。
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