研究課題/領域番号 |
21520674
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
竹永 三男 島根大学, 法文学部, 教授 (90144683)
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キーワード | 行き倒れ / 行旅病人 / 行旅死亡人 / 行旅病人・行旅死亡人統計 / 日本近代史 / 福島県 |
研究概要 |
4年間の研究期間の3年目に当たる2011年度は、史料調査を継続しつつ、研究成果の公表に努めた。 1.史料調査 (1)国立公文書館において、政府関係文書中の行旅病人・行旅死亡人関係文書の調査を、日本新聞博物館新聞ライブラリーにおいて、行旅病人・行旅死亡人関係の新聞記事調査をそれぞれ行い、関係史料を収集した。 (2)奈良県立図書情報館において、奈良県行政文書中の行旅病人・行旅死亡人関係文書の調査・閲覧を行い、関係史料のほとんどを撮影・収集した。 2.学会報告 10月23日に同志社女子大学(京都市上京区)で開催された第49回部落問題研究者全国集会(歴史II分科会)において、「近現代の『行き倒れ』(行旅病人・行旅死亡人)の実態とその救護・取扱いから見た日本社会の歴史的特質」と題して報告を行った。報告では、(1)行旅病人・行旅死亡人に関する歴史的研究・社会福祉学的研究等の全体を鳥瞰して成果と課題を示し、(2)戦前期における行旅病人・行旅死亡人数の府県別統計とその推移を提示するとともに、全国統計と府県統計の関係、その根拠となっている行旅病人・行旅死亡人の発生実態を検証し、(3)日露戦後の福島県における行旅病人・行旅死亡人の実態分析をもとに、これを生み出す日本社会の特質に言及した。 当日は、高岡裕之氏(関西学院大学)によるコメント「戦前日本における行旅病人・死亡人救護事業をめぐって」を得て討論が行われ、質問に答えつつ研究成果を展開した。 3.学術論文等の執筆・発表 上記法制史学会第49回部落問題研究者全国集会での報告を、同名の学術論文にとりまとめ、『部落問題研究』201に掲載される「報告特集号」原稿として提出した。同号は、2012年6月に刊行予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第1に、研究目的の中心である行旅病人・行旅死亡人関係史料の調査・収集という点では、全国の都道府県立文書館および国立公文書館等の調査と関係史料の閲覧、写真撮影をほぼ完了しえたこと、第2に、収集史料の分析の上に立って行旅病人・行旅死亡人の歴史的研究を行い、成果を発表するという点では、学会報告1回、都合4編の論文の発表(掲載確定分1編を含む)により、行旅病人・行旅死亡人の実態とその取扱法制に関する実証分析を進めることができたことによる。
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今後の研究の推進方策 |
2012年度は4年計画の最終年となるので、(1)補充の史料調査に加え、(2)東日本大震災・福島原発事故によって中断していた福島県における「行き倒れ」発生地(日露戦後期のもので地点が確定できるもの)の現地調査を行うとともに、(3)日露戦後期の福島県行政文書に収録された行旅病人尋問調書の全部について、これを翻刻して史料集を作成し、(4)その分析と他府県の行政文書中の関係史料分析とを併せて、近現代日本における行旅病入・行旅死亡人の実態分析とその発生状況および救護・取扱から見られる日本社会の歴史的特質の解明に基本的な見通しをつける「研究成果報告書」を発表する。
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