4年間の研究の最終年にあたる2012年度は、①福島県・宮城県における史料の確認調査、②行旅病人・行旅死亡人の人数を精確に確認するための一次史料である各種統計書等の比較分析、③行旅病人の実態を出郷理由・家族関係・移動中の糊口手段・「行き倒れ」に至る直接的理由等の分析、④日露戦後の福島県において「行き倒れ」を生み出す要因としての家族・労働・地域社会の在りようの分析を、それぞれ行った。 そして、その分析に基づく研究成果を、『部落問題研究』201・『日本史研究』607に、それぞれ学術論文として発表した。 以上により、①『帝国統計年鑑』『内務省統計報告』『府県統計書』「行旅病死人台帳」(群馬県行政文書)の比較および県庁・市町村役場文書の分析に基づいて「行き倒れ」関係史料の史料論的検討を行い、②『帝国統計年鑑』により「行旅病人」「行旅死亡人」数の年次推移と全国合計・同府県別人数の比較検討を行い、③戦間期東京府・東京市における「行き倒れ」人の人数及び「行き倒れ」発生地・「行き倒れ」人の本籍地等を分析し、④福島県における「行き倒れ」の発生地・出身地を明らかにし、⑤「行旅病人尋問調書」の分析に基いて家族関係と女性・子どもの実態を究明し、⑥出郷者を誘因するものとして炭坑・鉱山・北海道の存在を析出し、⑦「行き倒れ」の救護における地域社会の役割を明らかにした。 最後に、以上を総括して、「行き倒れ」の歴史的特質を究明する分析視角として「家族・労働・地域社会」という問題設定が有効であることを実証分析をもとに提示した。
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