本研究は、幕末維新期の政治過程について、長州藩を主たる研究フイールドとして、総合的に解明しようとするものである。本年度は、研究遂行に必要な基礎史料の調査・収集を行った。すなわち、山口県文書館所蔵の「忠正・忠愛両公伝考証」の4万丁をデジタル化し、あわせて考証綱文を入力することにより、用語による検索ができるようにし、これからの分析に活用する体制を整えた。これらの成果は、研究の基礎的推進に貢献できるものと考えられる。さらに、山口県文書館所蔵史料について、毛利家文庫、県庁伝来旧藩記録、徳山毛利家文庫、両公伝史料、諸家文書などの全体的調査を実施し、史料を幕末維新期長州藩の研究史上の論点ごとに整理し、「山口県文書館所蔵の幕末維新関係史料について」(『山口県文書館アーカイブズガイド』所収)としてまとめた。この作業によって以下のテーマについて体系的に史料を把握することができた。(1)対外的危機の発生と対応、(2)天保期の社会と天保大一揆、(3)天保改革、(4)ペリー来航と相模国警衛、(5)尊王攘夷運動、(6)安政改革、(7)攘夷方針への転換、(8)文久改革と攘夷実行、(9)、諸隊の結成と展開、(10)8月18日の政変と禁門の変、(11)元治の内戦、(12)慶応改革、(13)幕長戦争、(14)討幕運動、(15)維新政府の成立と戊辰戦争、(16)藩治職制と藩政の展開、(17)明治2・3年一揆と脱隊騒動。この成果により、幕末維新期長州藩政治過程の総合的研究を行う上での重要な指針を示することができた。
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