1、本研究は、阿仁銅山・大葛金山・八森銀山・太良鉛山など近世日本の有力鉱山が存在した秋田藩領北部地域における個別鉱山研究と諸鉱山の関係・交流史を究明するものである。平成21年度は、本研究の初年度であり、阿仁銅山に関する史料の整理、八森銀山に関する史料調査と収集・整理を進めた。 2、阿仁銅山を近世日本を代表する鉱山である。同山の支配人など現地での実務役人として活動した今林家の文書史料をデジタル化しA四版に焼付けるなどの整理を進めた。直山では藩庁から派遣された上士の詰合役の下で、鉱山経営の実務を担ったのは支配人・手代などであり、彼らは藩から扶持および給金を支給されていた。彼ら及びその子孫は明治30年代に士族編入の訴訟を集団で起こすなどの動向がみられる。近代になってからの身分の自己認識で注目される事件である。さらに明治初期の阿仁銅山の経営史料等から、その経営実態や改革の動向などについても知見を得ることができた。 3、秋田市立中央図書館所蔵の那波家文書を調査し、その一部をデジタル化しA四版に焼付けるなどの整理を進めた。同文書には秋田藩の直山に関する経営史料が所蔵されており、今後の分析によって近世後期の諸鉱山の経営動向が判明するものとして期待できる。またこれまで研究の進んでいない八森銀山に関しても、同史料から研究を着手した
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