今年度実施した概要は次のとおりである。 1. 歴史社会学の文献、オーラル・ヒストリーの方法に学んで、アンケート調査表及びアンケート依頼文書を作成した。内容としては、朝鮮という植民地での経験を浮かびあがらせるものを心がけ、また朝鮮人との接点の有無、朝鮮人に対する意識・感情、植民地という自覚があったかなどを設問として設定した。また引き揚げ後の人生についても設問をもうけた。 2. 京城第一高等女学校同窓生に対するアンケート調査については、同窓会幹事の同意が得られず、また対象者の年齢が80歳以上という高齢で、回収率の低さが予測されるため、インタビューを先行して行った。その際インタビュー前にアンケートを依頼して回収し、インタビューで内容を確認し、さらに詳細な話を聞くという手法にきりかえた。その結果として13名分のアンケートが終了し、10名のインタビューが終了した。 3. 京城第一高等女学校の沿革を把握する文献・資料として阿部洋編『日本植民地教育資料集成(朝鮮編)』、『京城彙報』、同窓会誌『白楊』の関連部分を収集した。 4. 植民地下の時代状況を把握する意味で、1930年代の朝鮮における愛国婦人会の活動について(これは対象者である女学生の母の世代の体験である)学会で報告した。 上記を行ったことにより、少女たちの植民地経験には共通点がある半面(これは植民地という構造の中におかれたことと関連している)、各個人によって異なる側面があることがおぼろげながら見え始めている。また引き揚げ後の人生の中で、植民地経験をとらえ返していく過程にはいくつかのパターンがあることも見え始めた。次年度はこれらについてさらなる考察を深めたい。
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