今年度実施した概要は次のとおりである。 1. 昨年作成したアンケート調査票について、12名に解答を依頼した。そのうち7名から解答を得た。 2. アンケート解答者のうち、インタビューに応じてもよいと言ってくれた4名にインタビューを行った。枚方市在住の24回生、東京在住の32回生、31回生、岩見沢市在住の28回生である。アンケートの解答を把握し、さらに詳しく尋ねたい点を整理してインタビューに臨んだ。その結果幅広い世代に渡る有益な証言を得ることができた。 3. 昨年度のインタビュー記録(録音)8人分を文字化した。これを印刷し、話者に送り内容をチェックして返送してもらった。正確を期すためである。ただしお一人が故人となられてこの方についてはチェックを受けることが不可能となった。 4. 植民地における日本女性の状況を把握する一助として、朝鮮に誕生した愛国婦人会の活動とその植民地的特徴について論文にまとめた。一本は韓国女性史学会例会で発表したのちその学会誌に投稿したものである。愛国婦人会の誕生が日本における愛国婦人会と同時並行的だったことが明らかになった。もう一本は勤務先の大学の紀要に投稿した。1930年代の愛国婦人会は大衆化路線へと舵を切り、これにより多くの朝鮮人女性を入会させていった。そして愛国班(内地の隣組)と手を携えて銃後活動を担い、朝鮮女性をもそこに動員した。こうした母たちの活動を少女たちは見ていたのである。 インタビューの中から広い世代にわたる体験が明らかになってきている。とりわけ日中戦争の前後で女学校生活の雰囲気が変化する様子が浮かび上がる。また引き揚げ体験の多様さも明らかになった。敗戦以前に本土に戻った者と敗戦後の混乱を体験した者とでは、その後の植民地に対する認識にも差がでてくるような予感がある。アンケート用紙の集計・分析にはまだ踏み込めていないが、体験者の語りと合わせて来年度は分析にとりかかる予定である。
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