今年度設定した課題のうち、在庁官人表の作成に関しては業務委託による補助を得て、鎌倉時代の分について入力を終えた。ノートパソコンを活用して、作業の効率化を図ることができた。昨年度の平安時代の分と合せて、概略の作業を終えたので、次年度には補足と校正を行い、報告書に在庁官人一覧表を掲載できるように作業を完成させたい。次に武士の成立に関しては、武士と相撲人、国衙機構との関係という視点から、土佐・讃岐、および下野について考察を行い、論文として公刊することができた。下野をめぐっては秀郷流藤原氏の祖であり、また武士の登場の先駆けとなった藤原秀郷について考察を行い、従来の研究で不充分であった点を掘り下げ、武士の成立過程を考究する手がかりも得ることができたと思われるので、今後そうした通時的考察の方向も探ってみたい。また受領の交替に関係する「国務条々」について昨年度の作業を論考として共著の形で公刊し、さらに藤原公任の『北山抄』巻十吏途指南の自筆本(国宝)の写真版を購入して、その読解にも着手している。これは次年度にも続く作業であるが、同様に校訂文や註解などを論考としてまとめることができばと考えている。在庁官人を統括する受領の動向や在庁官人の中央進出の契機としての受領との関係という視点も重要であることがわかり、研究の展開が期待できる。なお、史跡の巡検は今年度は行うことができなかった。やはり現地の踏査も重要であり、これは次年度の課題としたいと思う。
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