平成23年度は、荘園・公領の領域支配と負担構造の解明のため、これまでに作成したデータベースの補充・整理と、収集した史料の分析を行い、さらに帳簿のなかで土帳、実検図と呼ばれる史料について調査と分析を行った。それとともに、荘園・公領に賦課される諸負担のあり方の変遷と領域支配の確立過程について分析を行った。 1、荘園・公領の帳簿の網羅的収集とデータベースを基礎として、平安時代から鎌倉時代にかけての検田帳・検注帳について帳簿に関して、補足的な史料調査と史料の分析を行った。これにより、当該期の荘園・公領の実態解明、荘園公領制研究の基礎となる荘園・公領帳簿の史料的性格が明らかとなった。 2、特に、荘園・公領の帳簿のうち「土帳」「実検図」と呼ばれる帳簿については、その機能と史料的性格そのものの分析が必要であり、国立公文書館において内閣文庫所蔵大乗院文書のなかの大和国乙木荘土帳、同国若槻荘土帳、同国出雲荘土帳等の原本調査、神戸市立博物館において同館所蔵摂津国八部郡奥平野条里図の原本調査、および写真帳等を利用した調査をおこない、その機能と史料的性格について研究成果をまとめた。 3、そのうえで、荘園・公領に賦課される諸負担に関する史料のデータベースの補足と整理を行い、荘園の領域支配が確立していくなかで、負担構造がどのように確定され、それとともに帳簿がどのように整備され作成されていったのかの分析をおこなった。この研究成果は近日中に公表する予定である。
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